52章  「陰陽二元論・タオについて」 by 華駝 


 「陰陽二元論」は、古代中国から伝わる『易経』によるもので、

 宇宙のあらゆる要素は、まず太極という、一から分極した、

陰と陽という二つのエネルギーによって構成されている、という原理に基づくものです。


 この地球から見た場合、陽は、太陽にあたり、陰は、月にあたります。

 そして、その中心にいる地球に、私たち人間は生きているわけです。

 とすると、私たちは、太陽と月が織り成す、暦のリズム、時間のリズムなどの影響を、

直接に受け、自然の流れにそって生きなければならないのは、当然と言えるでしょう。


 この陰陽二元論の究極は「太極」、つまり

「陽極めれば、陰となり、陰極まれば、陽となる」で、陰陽は、循環しながら、

自然の摂理を生み出し、バランスを取りながら、一にして、太極であるということです。


 鍼灸の最も古典的な医学書に、『黄帝内経』というのがありますが、

自然の摂理、時空の要素をとり入れて、鍼の技術に応用した『黄帝内経』は、

自然の運行と、経絡の流れを考慮しながら、それぞれの、

気、血のバランスをとるときの手法を述べたもので、


古代の中国の人たちが、陰陽の存在を知りつつ、その本質を知りつつ、

編み出していったものと言えます。



 私たちの日常生活を見回しても、必ず、相対するものが存在するという、

一つの法則が、成り立っていることがわかります。


 プラスとマイナス、光と影、明と暗、内と外、酸性とアルカリ性、男と女、

天と地、南極と北極、昼と夜、積極性と消極性、能動的と受動的、主体性と受動性など、

有形無形を含め、すべてのものに、相対するものが存在します。

 これを陰陽に分類したのです。


 マイナスを、陰、と呼んだ場合、一方のプラスを、陽に分類するという考え方が、

陰陽二元論なのです。




●陰陽が一体となって事象が成立する


 陰陽に分類する基準は、同一の基準で行います。

 人間という基準で、男と女に分ける、宇宙という基準で、天と地に分ける、

地球という基準で、南極と北極に分ける、一日という基準で、

昼と夜に分ける、というようにします。


 すべてのものが、陰と陽になる質を持ち、また陰と陽の質を、重ね持ってもいるのです。

 陰と陽が、一体となって事象が成立するわけです。


 例えば人間の体も、たくさんの陰陽を重ね持っています。

 その結果、自分という人間が存在するのです。

 また、一つのものに裏と表があるのと同じように、日々の生活や仕事上においても、

物理的方法の中に、精神性を加えて一体化し、はじめて、

真に人間らしい生活している、ということです。


 このように私たちは、陰陽の法則の中で、自然のリズムの中で、

生かされているということなのです。


 この陰陽論に従わざるを得ない私たちは、

それぞれ、人の運気というものにもかかわりますが、

肉体的にも、その影響力が十分にあるのです。




●陰陽の交互の連続により事象が保たれる


 陰陽論の中でもう一つ大事なことは、陰陽が交互に並ぶものは、

連続性が出るという法則です。


 つまり、陰陽が交互になることにより、その事象が保たれるということです。

 私たちは、昼働いて、夜眠る、という生活を繰り返していますが、

このことにより、人間の生命が保たれているということなのです。


 この生活は、人間が決めたものではなく、自然がつくり出した、

昼と夜という法則にそって、人間が暮らしているということです。

 つまり自然の法則が、人間に影響を及ぼしているのです。


 それは肉体だけに限らず、精神的なもの、例えば私たちの成長過程で、

いろいろな人から教えを受けて、今に至っていると思いますが、

受け取るだけではなくて、今度は逆に人に教える、与えることで学び、

バランスを取っています。


 私たちの営みすべてに、自然の法則に従ったバランスが、与えられているのです。


 人間は宇宙の法則から外れて生きることはできないのです。

 そして、そのバランスを、自然の法則に従って、よりよく生かしていくことが、

人間本来の、心身の健康につながっていくのです。


 陰陽のバランスこそが、人をより豊かに生かす、法則なのです。



 すべての病気は、気血のアンバランスが原因。

 人間の体内にも、陰と陽があります。

 宇宙から与えられた、体内の気(エネルギー)を、陽と呼び、

そして、体内に流れる、血を、陰と呼びます。


 そして、「陽極まれば陰となり、陰極まれば陽となる」という言葉のとおり、

この気と、血との間にも、お互いに関係しあって、うまくバランスを取りながら、

私たちを生かし続けています。


 例えば体内を流れる血が、正しく流れない場合、または、どこかに滞りがあると、

そこで血の流れに乱れを生じ、さまざまな病気が発生します。


 そしてその血も、それを流すためのエネルギー源となる、「気」がうまく流れないとき、

血は滞ってしまい、うまく流れないのです。




●「先天の気」を消耗すると命を縮める


 「気」は、目に見えないものですから、西洋医療では、治療の対象にはなっていませんが、

実はこの、気こそが、生命を存続させることのできる源と、いえるものなのです。


 気には、「先天の気」と、「後天の気」があります。

 「先天の気」は、生まれるときから持っている気で、

「精気」と、「元気」の、二つの気があります。


 「精気」は、受胎したときに備わる気のことを言います。

 「元気」は、受胎してから細胞分裂をしながら、成長していく過程で得られる気です。


 この二つの気は、消耗して減ることはあっても、増えることはありません。

 そして、体外から補うこともできません。

 この「先天の気」が、全部消耗したときを「死」と言います。



 よく、「元気がないね」というような言葉を使うことがありますが、

このようなときに、「先天の気」を消耗していると言えるでしょう。


 ですから、本当はこの「気」を、むやみに消耗させないようにして大事に使えば、

長生きできるのです。



 「後天の気」は生まれてから、外部から取り入れることのできる気です。

「後天の気」には、「天気」と、「地気」があります。


 「天気」は、大自然に充満している気です。

呼吸や、細胞の働きで、体内に取り入れることができます。


 「地気」は、自然から生まれる、食物です。

 「後天の気」は、呼吸法や、気功法。あるいは、いろいろな健康法をうまく活用し、

また、より自然に近い食物をとるなど、活用しだいではいくらでも得ることがでるものです。




●気血は相互関係にある


 宇宙の中の陰陽を、私たち人間の体にあてはめたとき、

「気」と、「血」が、陰陽に当たります。


 宇宙のリズムは、私たち人間のバランスでもあるのです。

 また私たち体内の、気血のバランスは、宇宙のリズムと合致します。


 「気」は、「血」が得られなければ、分散してしまい、コントロールできなくなります。

 また一方、「血」は、「気」が得られなければ、凝固してしまい、流れなくなります。


 バランスさえとれていれば、自然法則に従った、

健康的な生き方ができるということです。


 私たちが、病気を引き起こしたときは、この気血のバランスが欠け、

どこかにブロックがあったとか、滞りがあった、乱れがあった、停滞した、

凝固した、などのさまざまな要因が考えられます。


 「気功」でも、この気血のバランスを取る、ということをよく行います。

 まず、気の流れを調整しながら、血のバランスを取るのです。


 「漢方医学」も、同じことです。

 気の滞りをよくする生薬、血の滞りをよくする生薬などを

うまく組み合わせながら、的確な治療を行っていくわけです。


 「鍼治療」でも同じことが言えます。

 これらの東洋医学では、六臓六腑に流れる気のルートを、陽と陰に分けています。

 そして六臓六腑は、ある一定のリズムで循環している、という考え方をします。

 人の体も、自然の法則に従って、生かされているということです。


 この気の流れのルートを、「経絡」と言っています。

 六臓の陽経、そして、六腑の陰経、この二つを、たし合わせると、

「十二経絡」が発生するのです。



 「六臓」は心、肺、脾、肝、腎、それと、心包を加えたものです。

 現在は五臓六腑を言いますが、東洋医学では、心包を加えて、

六臓六腑を一二経絡としています。


 心包は、心臓機能のコントロールを司る、「神経系」を指します。


 「六腑」は、大腸、小腸、胆、胃、膀胱、三焦を言います。

 三焦は、中国医学で使われている臓器で、

すべての臓器を包んでいる、大きな袋と言われています。



 「一二経絡」は、陽(プラス)と、陰(マイナス)、陽(プラス)と陰(マイナス)を、

繰り返しながら、相互バランスを取りながら、六臓六腑を循環しつつ、

体のリズムは、時々刻々調整されているのです。

 これを東洋医学では、「子午流中(しごるちゅう)」と呼んでいます。


 これらの法則は、私たちの体が、月と太陽のリズムによって、

コントロールされている、という証明にもなると思います。


 「一二経絡」は、肺経、心経、肺経、脾経、肝経、腎経、胆経、大腸経、小腸経、

心包経、胃経、膀胱経、三焦経を言います。


 一二の正経の他に「奇経八脈」があります。


 「奇経八脈」は、任脈、督脈、帯脈、陰維脈、陽維脈、陰きょう脈、

陽きょう脈、衝脈ですが、実際に治療に使われるのは、

一二の正経と、任脈、督脈を加えた、一四経絡です。


 この一二経絡の中で、最も重要な経絡は、陽経と、陰経です。


 「陽経」は、「気」の流れそのものです。そして、気の流れをコントロールしています。

 「陰経」は、「肉体」そのもので、そして、血をコントロールしています。

 この、血が乱れると、病が生じます。



 陰陽二元論は、「陽極めれば陰となり、陰極めれば陽となる」の通りで、

お互いに、相互に、陽経と陰経は、関連しあっているのです。


 言い換えれば、気と血は、このような相互関係があるということです。



 私ちは、「タオ」という、太極のバランスで生かされています。


 自然がそうであるように、私たちも例外ではないのです。

「タオ」は、私たちの体を構成する、気血のバランスを速やかに取り、

そして自然と一体となり、自然のあるがままの姿に、戻してゆくことにあります。


 私たちの体は、本来自然と一体であり、そこには自然法則があり、

「我即自然」の境地へ導いていくこと、しかも、速やかにそのことに気づかせてゆくことが、

この陰陽二元論のあり方なのです。


 そのことで、誰もが健康に生きることができるのですから。




 

 
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