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10章 「色即是空・空即是色」 |
by 空海 |
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「般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見
五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色」
私は空海です。
ただいまお読みいたしましたのは、般若心経の最初のくだりの部分でございます。
この般若心経という経文が なぜ、長い間、人々の心の中に問いかける、
答えを見出すものとして、多くの人々に、長い間、親しみ続けてられてきたのか。
この経文は、もともとサンスクリット語で書かれたものですけれども、
「パーニャ・パラ・ミトゥ」という中国音が、日本音へと変化し、
「ハンニャ・ハラ・ミタ」と、変わってきたのでございますけれども、
大切なことは、この経文の意味をよく理解することが大切で、
意味を理解せずして、真の経文の意味は、わからないのです。
ただ唱えただけでは、何の意味も持ちません。
それぞれの言語により、発声法も異なり、意味合いも変わってくるのです。
もっとも大切なことは、これらの違いを超越し、真髄に潜む、
真の意味を悟ること、にあるのです。
「色即是空、空即是色」。
皆様が見るものは幻であり、幻の中にあなたは振り回され、それはただ、
あなた方の、肉体の持つ五感に支配された、「色即」の、現象界そのものなのです。
すべては空蝉の如く、ただ漂っているだけ。
そのようなものに、皆様は支配され生きている。
それは「色」という肉体の持つ、五色(五感)あるがゆえに、
この拘束から抜け出すことが出来ず、苦しみを、悲しみを生む。
人の世は、四苦、四つの苦しみ生老病死によって翻弄され、この苦から逃れるためには、
あらゆる「色」の世界を「空」と悟ること、ただそれだけなのです。
すべてが幻なのです。人生きるゆえに幻を好み、楽しみ、悲しみ、笑い、それも人生かな。
はて、それら、ことのまことなりきか?
人の世の、空蝉の如き幻影に惑わされること無く、そなたらすべて、
空の、ただ空の中にあるのみということを。
すべては、何も無き空の大海原の中に、そなたが投影し、創り出したもう、
幻影であることを、今知るべきなのです。
「色即是空、空即是色」すべては、
「空」の意識から生まれた、「色」(現象)であるということを、
知っていただきたいのです。
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